下田民なら1度は聞いたことがある、鍋田で沈んだ潜水艦の話。私は、「戦争のときに潜水艦が鍋田で沈んだ」以上のことは最近まで知りませんでした。この話について詳しく調べたので、まとめたいと思います。

鍋田浜について

場所はここ

湾の中にひっそりとある静かで綺麗な下田の海です。

夏は海水浴客でいっぱいになります。堤防から飛び込むのが楽しいです。(最近は禁止されたらしい?)

戦時中の鍋田浜で沈んだ潜水艦について

いまから約75年前の戦時中は、この海を日本軍の潜水艦が拠点として使っていました。海を正面にみて右側に岩場があるのですが、そこから潜水艦とやり取りしていたようです。

昭和20年8月13日、終戦の2日前、この海に停泊していた三式潜水輸送艇第八号艇(通称、まるゆ八号(丸の中に「ゆ」と書く。㋴←みたいな))が爆撃によって爆沈し、艦内で作業中だった乗組員10名が戦死しました。

この部隊は、日本の島々への補給を行うことが任務でした。当時の日本で島民が住んでいる島は800余りで、その島々の警備にあたる陸軍の補給を行うには、海軍では小刻みに輸送を行うことができず、陸軍として補給を行うために陸軍の潜水輸送部隊ができました。下田には潜水輸送部隊の1個大隊が配備され、8号艇と14号艇が下田に、稲取港に6号艇と7号艇、妻良港に9号艇と12号艇が配備され、新島・式根島・神津島・三宅島・八丈島への輸送を行いました。

爆沈について

鍋田を停泊地としていた8号艇は、八丈島の任務を終えて8月10日の朝に鍋田に入港しました。任務の労いのため、2班に分かれて蓮台寺の休養所で11日から13日まで休養を行っていました。

13日6時ごろ、警戒警報が発令されました。艇は休養している班を待ちましたが、警報でバスの運行も止まってしまいました。7時20分には空襲警報が発令され、敵艦載機が伊東上空を南下中との情報がありました。

宇野艦長は陸上で作業中の艇員と共に艇に戻る寸前に、グラマン2機の直下急襲に見舞われ、投下弾2発の内の1発が艇中央部の司令塔付近に命中し、艇は大きく二分されて当直の艇員10名が戦死しました。

宇野艦長は10名の救出に努めるも、困難を極め、1名も救出はかないませんでした。

爆沈の後

悲劇から2日後、8月15日に終戦となりました。軍の別命があるまでは、全艇員が救出作業を続け、鍋田の海女さんたちの協力も得て千切れ千切れとなった肉片を集めて、遺族へ渡す準備をしていました。

8月17日には軍の司令により清水港に引き上げ、遺灰遺品は軍の手配で遺族のもとに還りました。

宇野艦長は一人、毎年8月13日に鍋田に訪れて司令塔のみを海上に見せる艇に御冥福をお祈りしていました。

しかし、昭和26年に訪れた際には8号艇の面影がありませんでした。昭和25年、朝鮮動乱で日本で再び軍需産業の復活となり、そのために日本にあるスクラップを集めるために大蔵省の許可のもとに日本沿岸の沈没船の引き上げが行われ、8号艇もその流れで引き上げられていたのでした。

供養

その後、海女さんたちによって拾い上げられた、まだ海に残っていた遺骨は泰平寺に納められました。その一方で、泰平寺に眠っているとは知らなかった宇野艦長は、海善寺に自費で供養塔を建立しました。

昭和49年の伊豆沖地震で、お寺の墓が倒壊していた中に8号艇の供養塔がある事がわかり、供養祭を実施する流れになりました。昭和50年3月8日、鍋田の浚渫を行い、遺骨を拾い上げ、お骨の壺は宇野艦長、畑井航海長、高橋通信長の胸に抱かれて海善寺に安置されました。

昭和52年、33回忌の準備に取り掛かりました。この時点で、8号艇の戦没者たちは公の慰霊祭は一回も行われていませんでした。3月12日に慰霊祭が行われ、定刻前に遺族は宇野艦長の先導で爆沈地の海面に献花を投入しました。13時に開始した慰霊祭には、元潜水輸送部隊長、元大隊長をはじめとした戦友250名と静岡県知事代理、下田市長、議長や一般関係者150名、合わせて400名余りの列席となって式典が行われました。

平成5年、終戦50年を迎えるにあたって、宇野艦長は碑の建立計画を立案しました。鎮魂とあり、鍋田の適地を探したが国立公園法や県の港湾計画などの阻まれ、最終的に大浦八幡宮の敷地に建てられることとなりました。

平成6年4月23日、遺族・戦友110名と下田地区15名の列席により鎮魂之碑の除幕式が行われました。

参考

  • 終戦50周年記念誌 海鳴り ー昭和の戦争と下田ー

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One response

  1. こんばんははじめまして、Twitterから飛んできた下田好きです。
    今週末、海浜ホテルにとまります。
    駐車場のそばに鳥居が見えますがきっと大浦八幡宮ですね、手を合わせてきたいと思います。
    貴重なお話ありがとうございました。

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